――ああそうか。だからなるほど。
私というヒトは、つくづく愚か者だったんだ。
とある大国の片田舎に生まれた彼女は、望まれながらに生を受け、そして望まれない生を歩む羽目となる。
人とかけ離れた感性、そして知識、その成長。まともな人間であるのならば、少女アリスはこの上なく優秀な人間であったに違いない。
初めに人を殺したのは五つの頃。七歳になるまでに、彼女は六人を殺害せしめた。
彼女はただ、少しだけおかしかっただけなのだ。
ただ少しだけ、ヒトを簡単に殺せるだけの力を持っていた。
何がいけなかったのか。どうしてこんな事になったのか。
「――行こう。人間の世界に、お前の生きる場所はなかった」
生まれてからずっと一緒にいた悪魔が、そのように言う。
死の少女アリスは、ヒトの世界では見れなかった前を、未来を見る為に、ルシファーの地へと足を踏み入れる。
未来へ。胸をはって前を見る事の出来る未来へ。
現世のあらゆるものをかなぐり捨て、少女アリスは魔界にて生きようと心に決める。
幼い彼女には、それが正しいのか、間違っているのか、判断は出来なかった。
新たな出会い、心温まるような生活。現世では得られなかった想い。
アリスの中でくすぶり続ける死の能力は、けれどもそんな運命を引き寄せて行く。
願いに答えを。想いに価値を。
……。
時は移り変わり、アリスは幻想郷の妖怪として暮らしていた。
何不自由なく、幻想郷で己の探求を続けるアリスにやがて転機が訪れる。
突然の人形制作依頼と、その巨額な依頼費。自律人形の確立を目指していたアリスにとって、この支援は願ってもないものだった。
何故、どうして。疑問は尽きないものの、眼の前にある約束された現実に、アリスは一歩を踏み出した。
――――それが、一体どれほどの価値を持ちえるものなのかも、知らずに。
かくあれかし、死の少女アリス。
あらゆる価値は君の手に。
「Witch of Life」
第七回博麗神社例大祭新刊「Witch of Life」 東5 し22b
原作 上海アリス幻樂団
著作 俄雨
イラスト サーシス
原案 みりんぷれいす同人誌『Beginning of the Infinite.』
原案協力 美鈴まさき
主演 アリス・マーガトロイド